ビットトレントによる不正共有で発信者情報開示請求を受けたら

弁護士コラム2021年11月号

(最終更新:2022年4月26日)

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 ビットトレント(BitTorrent)でテレビ番組、映画、アニメ、アダルト動画等をダウンロードしてしまい(※1)、プロバイダーから発信者情報開示請求に係る意見照会を受けた場合、それらの映像に係る権利者からプロバイダーに対して発信者情報開示請求が行われたことを意味します。

 発信者情報開示請求を受けたプロバイダーは、通常、IPアドレスから特定した利用者に対して発信者情報開示請求に係る意見照会書を送り、情報開示に同意するかを確認します。

 発信者情報開示請求は、インターネット上で著作権侵害や名誉毀損を受けた被害者が加害者に対して損害賠償請求や刑事告訴を行う前に加害者の氏名や住所を明らかにするための手段です。

 そのため、今後権利者から著作権侵害を理由とする損害賠償請求や刑事告訴を受ける可能性が十分あり、単に情報開示に同意するだけではなく、速やかに権利者に謝罪した上で示談交渉を行うべきケースが少なくありません。

 なお、ビットトレントによる不正共有の場合、権利者側は不正共有者全員による共同不法行為が成立している旨の主張を行ってくることが多く、権利者側から高額の賠償金を要求されるケースが見受けられます。

 ただ、少なくとも下級審では、不正共有者間の共同不法行為の成立を認めながらも、権利者側の請求額を大幅に減額する判決(※2)も出ていますので、適切に示談交渉を行えば、請求額を相当程度減額できるケースも少なくないものと考えられます。

 いずれにせよ、特に著作権侵害のお心当たりがある場合、開示に同意すべきかどうかを適切に判断した上で、開示に同意する場合は示談交渉のタイミングを逃さないためにも、意見照会書を返送する前に一度弁護士に相談することをおすすめいたします。

 プロバイダーから発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いてお困りの方は、お電話(096-288-2193)又はLINEで、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 LINEでお問い合わせの場合は、熊本セントラル法律事務所 LINE公式アカウントを追加の上、トーク画面からお問い合わせください(※3)。

※1 ビットトレント(BitTorrent)は、ダウンロードと並行してアップロードを行う仕組みであるため、アップロードしている認識があまりなくとも著作権者の送信可能化権等を侵害してしまったこととなります。μTorrentをはじめとするビットトレント互換ソフトウェアについても同様です。
※2 ビットトレントによる不正共有事案については、収益目的で著作物をアップロードする事案に比べて悪質性が低いと考えられるところ、知的財産高等裁判所(知財高裁)及び東京地方裁判所(東京地裁)はいずれも技巧を凝らした論理構成により結論の妥当性を図る画期的な判決(知財高判令和4年4月20日及び東京地判令和3年8月27日)を下しています。(2022年4月25日追記)
発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いた場合、開示に同意するか否か、示談に応じるか否かにかかわらず、これらの判決で示された考え方に照らして、万が一訴訟になった場合のことを考えてあらかじめ有利な証拠を確保しておくことが重要です。
※3 LINEでのお問い合わせは24時間365日いつでも受け付けておりますが、土日祝日にいただいたお問い合わせは原則として翌営業日中に折り返しのご連絡を差し上げております。